【『レッド・メタル作戦発動』刊行記念・連続エッセイ/冒険・スパイ小説の時代】回顧と展望、そして我が情熱(荒山 徹) 冒険アクション大作『レッド・メタル作戦発動』(マーク・グリーニー&H・リプリー・ローリングス四世、伏見威蕃訳)刊行を記念し、1970~80年代の冒険・スパイ小説ブームについて作家・書評家・翻訳家が語る連続エッセイ企画を行います。 第2回は作家・荒山徹さんです。 *** まったく何という時代だったのか。途方もない――かえりみて歎息するばかりだ。1970年代末から80年代にかけ隆盛を極めた冒険小説の時代のことである。高校、大学、勤め人デビューの多感な時期に遭遇した。どっぷり浸かった。狂瀾怒濤、爛熟と形容していいと思う。何しろ毎月のように傑作が連打され、嘘偽りなく、読書に没頭するあまり寝る間もない日々だったのだ。 全拙作に、その時代が刻印されている。デビュー作は、不敗の名将を殺すべ