2013/02/18 「モノクロならいい写真が撮れるとでも思ったかい?」とあいつは言った。『Hueless』 教室の隅っこで現像されたばかりの写真を眺めていると、あいつが近づいてきて言った。 「モノクロならいい写真が撮れるとでも思ったかい?」 むっとして見つめると、あいつは、冗談だよ、とおどけながら教室を出ていった。 今でも僕の書斎の引きだしには、当時流行ったモノクロフィルムで撮影した色のない(hueless)写真がたくさんしまってある。 あいつは芸術家だった。 子どもの頃から絵がうまいとちやほやされてきた僕は、美術の時間に彼の描く絵を見て息を呑んだ。パレットで混ぜあわされた深い茶色が、画用紙の上で水に伸ばされて、グラデーションを描いて踊るように広がっていた。そのときはじめて、僕は本物の水彩画というものを目にしたのだった。 文化祭で使う看板に僕が得意のイラストを描いているのを見て、あいつは
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