*この解説は、濵口宏夫「光と分子」、化学のすすめ(筑摩書房)をホームページ向けに改変したものです。 光はこの世界の成り立ちそのものと深く関わる極めて重要な役割を果たしている。例えば、光を抜きにして生命を語ることはできない。生命活動を支えるエネルギーは、つきつめて考えると、すべて太陽から供給される光エネルギーである。また、生体はさまざまな光情報処理機能を備えていて、それに基づいて外界の環境変化に対応している。視覚がその代表例である。このような重要な役割はしかし、光によって単独で演じられている訳ではない。そこには必ず光の共演者である分子が介在し、光と分子の二人三脚によって初めて様々な機能が発現するのである。 光はまた分子の世界へのガイドとしても独自の役割を果たす。分子の世界は極微の世界であり、どんな顕微鏡を用いても動きまわる分子の姿を直接に見ることはできない。しかし、分子が光に託してわれわれに