「伊藤計劃記録」が届く。「虐殺器官」の文庫にも増して美麗な表紙に、しばし惚れぼれする。「The Indifference Engine」や「From the Nothing, With Love.」に加えて、彼がwebに書いていた映画評も収録されている(精選、ということで、すべてではない)。 それにしてもブログの文章というのは何とも奇妙なものだ。web上でだけ知っていて、何をどう感じどう考えどう書くかを漠然と予想し、当ててはにやりとし、外してはその意外な方向の冴えに舌を巻く相手が、おそらくは誰にでもいるだろう。かつて、私にとって伊藤氏はそういう人物だった。この本の映画評を読んでいると、彼がまたそういう相手になっただけなのだと——何かの事情で暫く会っていないだけで、更に何かの事情で更新が滞っているだけで、いきなり「ハート・ロッカー」について、或いは「シャーロック・ホームズ」について、お、そう