北京オリンピックを伝えるNHKの放送に出た翻訳テロップである。 このテロップを見ただけで、日本語を母語とする私たちは、話者について何らかのイメージを思い浮かべることができる。 ①は力強さと自信をもっている男性、②は華やかさ、または上品さをそなえた女性、というように。 テレビのスポーツ放送における翻訳テロップには、「~さ」「~(だ)ぜ」「~(だ)わ」のような、日本語話者が話しことばとして日常的にはあまり使わないことばづかいが登場する。なぜ、現代の日本人はそんな話し方をしないにもかかわらず外国人のインタビューには使われるのか。特にスポーツ関連のニュースやドキュメンタリーというノンフィクションで使われているのはなぜか。 本稿では、北京オリンピック放送に出た翻訳テロップを、「役割語」という観点を導入して分析することによって、これらの疑問を解こうと試みた。分析の結果、翻訳テロップに役割語が出現する人