20世紀文学史上最大の問題作。原著刊行から半世紀をへてようやくその全貌を日本語で読めるようになった。その魅力と奥深さとは──。 モーリス・ブランショの『終わりなき対話』が刊行されたのは一九六九年。ほぼ半世紀の時を経て、この伝説の書の邦訳がいま私たちの元に届けられるのを目の当たりにして、深い感慨に耽るのは私だけではないはずだ。『文学空間』や『来るべき書物』がいち早く刊行されていたにもかかわらず、翻訳大国である日本で、この主著がこれまで訳されなかったことは驚きだが、この遅配には幾つかの理由がある。 単線的に進むことのないテクスト群の内容はきわめて明晰でありながら、いざ翻訳を試みれば、その内容の豊穣さに比例するように、多くの困難に遭遇するのは必至だ。文学的センスはもとより、ギリシャから現代哲学までの該博な知識なしには歯が立たないからだ。フランスで研鑽を積み、文学と哲学の両分野に通暁した新しい世代