4月の初め、夫が会社からスーパーで売っているような辛い漬物をもらってきた。聞くと、新入社員の男の子が挨拶回りに来て「お近づきの印に」とくれたらしい。うちではまず買わないタイプの味の濃い、辛い漬物。何の包みもリボンもなく、そっけない様で、なぜこれをくれたのだろうと謎めいたそれ。捨てるのももったいないので仕方なく食べはじめたら、普段食べない刺激がもの珍しくて三日に一回くらい食べていた。そして今は4月の下旬、まだ漬物はなくならない。だって辛くて少しずつしか食べられないから。 漬物を食べるたびに、くれた新入社員の子のことを話す。今日もまた夫と食べながら、これって、それが目的なのでは…と少しぞっとする。お菓子や生ものだったら一日で食べつくして、同時にくれた人のことも忘れてしまう。それに比べ、日持ちのする辛いものだったら、長く話題に上る。一度も会ったことのない私ですらその子の名前を覚えてしまった。訳の