ファン・ゴッホ作の『ひまわり』を安田火災が落札し、同『医師ガシェの肖像』をある個人が落札したことを、覚えているだろうか。当時の日本は、バブル経済の真っ只中。狂っている。僕はただそう思ったものだ。 本作は、絵画に狂わされた人間たちを描いた物語だ。ファン・ゴッホの幻の作品が、もしも存在したら。幻の作品の存在を巡り、様々な人間たちの思惑が交錯する。 本作の主人公である秋山秋二は、『テロリストのパラソル』における島村と同様に、世間との関わりを極力絶って生きていた。彼はかつて、画家として、グラフィックデザイナーとして、優れた才能を発揮した。しかし、妻の英子が自殺を遂げた後、彼はその才能を放棄する。 天才とは不愉快なものだ。そんな言葉が、作中に出てくる。なるほど、秋山は天才なのだろう。天才だからこそ、彼なりに思うところはあるのだろう。しかし、実際に秋山のような受け答えをされたら、この上もなく不愉快に違
本日の記述は、『本格ミステリ・ベスト10』(原書房)、本格ミステリ大賞の動向を毎年気にしているぐらいのミステリ・ファンだけ読んでください。 本格ミステリ作家クラブ会員による本格ミステリ大賞の推薦作投票が、16日で締め切られる。それを参考に、予選委員が合議で月内に候補作を決定。その後に、各人が選評を書いたうえでの本選投票、大賞決定へというスケジュールになっている。この過程で、東野圭吾『容疑者Xの献身』ISBN:4163238603再燃するだろう。なので、せっかちに反応する必要はないと思っていたが、現時点での覚書を記しておく。 二階堂黎人は、HPで『容疑者Xの献身』は本格ミステリではないと主張し、『2006本格ミステリ・ベスト10』ISBN:4562039728品を1位に推した投票者たちを批判した。円堂都司昭も名指しされていた。 http://homepage1.nifty.com/NIKAI
ためいき。 昨日は横山秀夫サスペンス『深追い』を見てしまったために、『危険なアネキ』を見忘れた。別にいいけど。『深追い』の方は、短編だから今回も複数の話を織り交ぜるのかなー、とか思っていたらホントに短編一本勝負だったので驚き。2時間ドラマとしては恐ろしく展開のないドラマになっていた。なんつっても殺人事件が起きるわけじゃないし、血糊の一つも出てこないし、椎名桔平が殆ど一人芝居だし、とにかく地味。横山秀夫原作ドラマはどうしても地味になりがちだけど(それでも『第三の時効』シリーズはキャストも事件も派手さがあるけど)今回はいつにも増して地味だった。これで視聴率取れたのかと心配になるほどに。私は横山シンパですから短編一本をこんなにじっくり見せてくれたことに感謝を感じこそすれ、否定はしません。羽田美智子が思ったよりもよかった。しかし、ホントに地味だったなあ。 熱が欲しい。 『魔王』伊坂幸太郎(ISBN
交換殺人には向かない夜 (カッパノベルス) 作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 光文社発売日: 2005/09/26メディア: 新書 クリック: 8回この商品を含むブログ (84件) を見る この作家二冊目。 とてもチープなギャグ(しかし常套的ではなく、作者自身の色々な意味で独自の感性が反映されていると思う。誉めないけど憎めないですね)とドタバタな展開に目を奪われていたが、ラストで明かされる真相と、そのために周到に用意された緊密な構成に圧倒される。ははあ、そう来ますか、と単純にいたく感心した。東川篤哉が、実力者であることを自ら満天下に示した傑作ではないか。今年の本格系ベスト投票では、そこそこの票を集めそうだ。 もっとも、出版社のブランド力から、数字の上では『館島』に大敗を喫するんだろうなあ……。
交換殺人には向かない夜 (カッパノベルス) 作者: 東川篤哉出版社/メーカー: 光文社発売日: 2005/09/26メディア: 新書 クリック: 8回この商品を含むブログ (84件) を見る私立探偵・鵜飼は、善通寺咲子という女性から依頼を受けた。夫である画家・善通寺善彦が、就職活動のため下宿に来ている遠縁の娘・遠山真理子と浮気をしているようなので、使用人として潜入調査をしてくれというのだ。一方・鵜飼の弟子の戸村流平は、以前の事件で知り合った十乗寺さくらから、旅行に付き合って欲しいという依頼を受けていた。鵜飼は探偵事務所のビルのオーナーで事務所のオーナーも勝手に名乗っている朱美を連れて善通寺邸へ、戸村とさくらは八ミリカメラを購入して「ひまわり荘」――さくらの友人で元・女優の水樹彩子(本人によると今も女優らしいが)の別荘だ――へ向かった。そして雪の降る夜、烏賊川市街の路地で発見された女性の死体
分厚くて字がびっしりだけど読み口が軽くて気づけばどっぷり読んでしまう幻想伝奇トラベルミステリエンターテインメント(適当だ)。『鳥類学者のファンタジア』が好きだった人ならきっと気に入ると思う。流麗な描写の中に何事もなかったかのように埋まっているお笑い具合が楽しいです。 助教授桑潟幸一は、たまたま文学辞典に説明を書いた作家、溝口俊平の遺稿が雑誌に掲載されるということで原稿を依頼されたことから、恐ろしい思いをすることになる。うだつのあがらない助教授「桑幸」のどうでもよい日常(これが「スタイリッシュ」とはヒッキー*1らしい前衛的な言葉遣いである)における小物っぷりが面白い。現実と幻想を難もなく行き来する展開の見事さは相変わらず。怪奇な場面は描写が達者なので一層怖くて読むのがつらいのが困ったところ。 瀬戸内海の小島での伝奇がいかにもそれらしく根が深そうで、こんな小物が事件を解決できるするのかいな…と
神様ゲーム (ミステリーランド) 作者: 麻耶雄嵩出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/07/07メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 304回この商品を含むブログ (217件) を見る 小学四年生の芳雄の住む神降市で、連続して残酷で意味ありげな猫殺害事件が発生。芳雄は同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。そんな時、転校してきたばかりのクラスメイト鈴木君に、「ぼくは神様なんだ。猫殺しの犯人も知っているよ。」と明かされる。大嘘つき?それとも何かのゲーム?数日後、芳雄たちは探偵団の本部として使っていた古い屋敷で死体を発見する。猫殺し犯がついに殺人を?芳雄は「神様」に真実を教えてほしいと頼むのだが…。 じゃ、邪悪すぎる…。 すげーぜ麻耶雄嵩!とても「ミステリーランド」の内容とは思えねー邪悪さ! 「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」がキャッチフレーズとはいえ
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