子供の頃に一緒に暮らしていた家族が亡くなり、東京都内の火葬場へ初めて行ったときのことだ。続々と到着するお棺の多さに、都心の現実を見せられた気がした。 日本では年間に約110万人が亡くなる、という統計の数字を引くまでもなく、「死」は社会の中に自明のものとしてあるに違いない。ただ、頭ではそう理解しているつもりでも、日々の生活の中でそれを実感する機会はとても少ない。 火葬場の混雑風景を目にしたとき、近しい人の死が初めての経験だった当時の私は、普段は見えない「死」という日常を突きつけられた気持ちになった。社会には確かに「死」があふれていて、それはとても身近なところにもある。自分にとってかけがえのない別れの場だったからこそ、ふと考え込んでしまった瞬間だった。 本書はそうした「日常としての死」、とりわけ葬儀ビジネスの現場をリポートした一冊だ。 タイトルに「経済学」とあるように、葬儀費用の実態がまず明ら