あれはもう随分と昔の話になる。私が脳抜き職人になりたてのころの話だ。最近では、死んだ人間をミイラにするなどと言うと、「昔、本はパピルスでできていたんだよ」と言ったときと同じ顔で驚かれる。若いやつはどいつもこいつも電子書籍、電子書籍だ。パピルスのよさも、石板の手触りも知りはしないのだ。本当の知識が身につくというのが、どういうことかわかっちゃいない。 おっと、私の脳抜き仕事の話だったな。年をとると話が逸れやすくなる。記憶に対して奔放になるんだ、覚えておくといい。ともかく、私は二十を過ぎてぶらぶらしていた。親から金をくすねては、日の出町あたりでよく一人飲みをしていた。風俗にもよく行ったし、競馬もよくやった。まさに飲む、打つ、買う、そんな日々だった。 だが、ある日、リフレの店でJKにオールド・スクールのとどめのチョップを食らって、電撃みたいなのが走ったんだな、このままじゃいかんと。どうしてかそう思