1 はじめに 性犯罪と犯罪統計 平成27年版犯罪白書の特集は「性犯罪者の実態と再犯防止」である。この時期に,性犯罪を特集し,認知件数に始まる司法手続の各段階における統計のみならず,現在の性犯罪規定下における性犯罪者の実態を詳細に調べることには大きな意義があると考える。 犯罪統計は,現実に社会で起こる犯罪そのままの姿ではない。そこには必ず,公的機関の統計に載らない,警察に認知されない「暗数」が存在するからだ。しかし,この「暗数」の大きさは,犯罪の内容や,社会の事情によって左右される。例えば,殺人を考えた場合,被害者本人が通報することはできないが,犯人を除いて,人が亡くなっているのをみつけた場合,多くの人は警察や消防署(救急車)に通報するだろう。自身が被害者である場合,通常,窃盗より強盗のように,被害が大きいとされるほど,通報率が上がり,暗数が少なくなると考えられている。 それに対して,性犯罪