35歳で、初めて車を買った。日本で車を買う初めての年齢の平均は26.6歳らしいから、世間の平均から見れば10年遅れでの購入になる。これまで車を所有していなかった理由は、「東京は車は必要ないから」とか、「これからはシェアリングエコノミーの時代だから」とか、そういう都会的、先進的な発想からではない。実際カーシェアは何度も使用したことがあるけれど、どちらかと言うと、これまで国内外問わず住む場所を常に転々してきた自分にとって、「車買っても、次の月にスウェーデンに移住しようと思ったら車どうするの?」という、半ばイキった遊牧民的な思想に取り憑かれていたからだ。ノマドこそ最も美しく自由な生き方であり正義であって、住む場所を固定したり、バックパックに収まる以上の荷物を持つことは人生への足枷を増やし、苦しみを増やす生き方とさえ思っていた。いつどこでもバックパック片手に世界中好きな場所で仕事ができるような人生
