日本の賃金が国際的にも低い、増大する内部留保と比べても賃上げが不十分だ、という声はここ数年高まってきた。2013年には政府が春闘における賃上げを後押しする、いわゆる「官製春闘」が始まった。 そうしたトレンドを受け、コロナ禍のなかの今年の春闘でさえ、議論そのものは賃上げの流れ継続に案外好意的であった。現実のデータを見ると官製春闘開始後も必ずしも大幅な賃金上昇は見られていないものの、「賃上げをすべき」という考え方自体は、議論のレベルではコンセンサスを得たといえよう。 その背景には過去の失敗から続く異例な状況がある。まずバブル崩壊以降の日本経済の経緯をたどりつつ、賃上げの必要性がなぜ浮上したか、を振り返ろう。 内部留保が劇的に増えた理由 賃金が低い、賃上げが必要、と言われる状態はどこから始まったのだろうか。話はバブル崩壊後にまでさかのぼる。画期は1997年だ。この年、不良債権の先送りが限界となっ
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