リーマン・ショックが起きたのが2008月の9月15日。早いものでそれからほぼ2年が経過したことになる。 この間、経済学をとりまく情勢は大きく変わった。 それは、経済書の題名の変化からもうかがい知れる。つまり、『ヤバい経済学』『ソウルフルな経済学』『まっとうな経済学』といった題名から、『経済学は人間を幸せにできるのか』『経済学は死んだのか』、あるいは「新しい経済学」を謳う本への変化である。 ちなみに、最近、陸続と新著が刊行されている行動経済学には、少なからず経済学批判の要素が入っていると思う。つまり、人間の合理性の仮定を疑うという行動経済学が人びとにアピールするのは、それが常日頃から人びとが覚えている経済学への違和感を代弁してくれていると感じるからだろう。 それにもかかわらず、私は日本が抱えている問題の多くは、経済学の知見が利用されているからではなく、経済学が無視されているからではな