ブランドの達人・序文 1. 新・マーケティング原点主義 1. 昨日見たテレビコマーシャル、何か覚えていますか? 芥川龍之介は「侏儒の言葉」の中で、「歯科医の看板にしても、それが我々の眼には いるのは看板の存在そのものよりも、看板のあることを欲する心、――ひいては我々 の歯痛ではないか?」と言っている。 歯痛でない人にいくら歯医者の看板を見せても、記憶には残らない。ましてや、看板 があふれかえっていれば、目にも入ってこないというわけだ。 芥川に言わせれば、「欲する心」を理解した上でマーケティングをしなければいけな いということだろう。 TV広告業界用語に「F1層」*という言葉がある。 「20歳~35歳までの女性」を意味す る言葉だそうだ。「F1層」に向けてマーケティング? 僕は、会ったこともない「20歳 ~35歳までの女性」に(「欲する心」を予想して)、何をプレゼントすればその女性を 口説け