近世~近現代の歴史遺産の保存・活用が目的の「国登録有形文化財」で、選定された建造物の解体などが100件に達していることがわかった。国宝や重要文化財と比べて規制が緩く、所有者が経済的理由などから手放すケースなどが多く、災害で失われた建造物もある。文化庁は今年度、耐震補強などの費用を補助する制度を導入。遺産の消滅に歯止めをかけたい考えだ。 名酒を育む灘五郷の蔵元の一つに「重ね蔵」(神戸市東灘区)と呼ばれる建物がある。木造2階建て約1000平方メートル。醸造用の蔵と酒蒸しなどの作業用蔵が連なる江戸後期の建築で、2010年に登録された。 しかし、所有する酒造会社の融資の返済が滞り、蔵を含む建物が差し押さえられた。今年3月、神戸地裁での競売で、県内の住宅開発業者が約2億2000万円で落札した。 灘五郷酒造組合などによると、重ね蔵は、1995年の阪神大震災で被災した数十棟の木造酒蔵のうち唯一修復され、