中学生時代、私は比較的勉強が得意なほうで、そこそこ成績は良かった。ところが、一度だけ国語の論説文読解の問題で文意をまったく理解ができないことがあった。あまりそういう経験をしたことがなかったので、よく覚えている。河合塾の模試だった。 その論説文は、「壁を設けること」という観点から日本の文化を論じる内容で、対人関係や住居におけるさまざまな「壁」に関していくつか具体的な事例が展開された後、結論へと続く運びであった。ところが、その結論が当時の私にはまったく理解のできないものだった。その結論とは、「壁」を作らないことは失礼なのだという趣旨のものだった。 当時の私の認識はまったく逆で、「壁」をつくらず、開けっぴろげで、気さくな様こそが良いものとばかり思っていたから、自分の認識とはまったく逆の結論をうまく理解することができず、試験の結果としては実に芳しくないものとなったのだった。 そんなことを最近急に思