食卓でおなじみの卵。白身は生の状態だと透明でドロドロだが、ゆで卵にすると白い弾力を持った状態に変わる。ごく当たり前のこの現象を応用し、驚くべき高強度材料の開発をやってのけた研究者がいる。強度は実に、ゆで卵の150倍以上。医療用素材や食品への利用が期待される。 中国・東南大准教授の野島達也さんはタンパク質科学の研究者。東京工業大特任助教だった平成28年には、水に溶けたタンパク質の分子が界面活性剤を使うと凝縮する現象を、チームで発見する成果を挙げている。 同年秋ごろ、大学近くのコンビニで売られている卵を見つけ、ふと考えた。「タンパクはもともと、卵の白身という意味だ。タンパク質科学者にとって、これは原点。開発した界面活性剤の技術が白身にも適用できたら、技術の普遍性がアピールできる」 生物の体を構成する重要な成分のタンパク質は近年、金属やセラミックスに続く次世代材料として注目されている。ただ、微生