白い空に白い万両の実る冬。 ここにはいつか牛がいた。 牛のそばには人間がいた。 朝になると牛と人間は連れだって出かけた。 ほうい、ほい。 ほうい、ほい。 そうでないとき牛は槙の木につながれて、 のっそりのっそり石臼を回した。 人間は近くの納屋でむしろを編んだ。 むしろ機(ばた)の音に合わせて牛は歩む。 ぎいぎい ばったん ごおろ ごおろ 枯れた木のような人間がいた。 餅のような赤子を重そうに抱いて くぼんだ槙の幹を指差した。 ほうら、ご覧。 あれが牛がつながれていた跡。 昔、ここには牛がいた。 口をもぐもぐ動かしながら 槙の木のぐるりを歩いていた。 槙の梢にはしのぶぐさ。 石臼を回す牛と パンジーを植える私を見下ろしている。 ・・・・・・・ というわけで、 槙の横にある花壇の草取りをしました。 見張るともなくこちちを窺う猫。 木の下にある手水鉢で水を飲む猫。 草取りをしていると、 心が遠く