「もう限界です。会社を辞めさせてください」――。中堅システム・インテグレータの若手SEである中川良成さん(仮名)は,入社のとき世話になった人事担当役員に電話をかけ,涙で声を詰まらせながらこう訴えた。 「分かっている,あいつが原因だな。とにかく会って話そう」。人事担当役員の言葉に,救われた思いがした。あいつとは,中川さんの先輩社員であるC氏のことだった。 話は2年前にさかのぼる。新卒で入社した中川さんは研修を終えるとすぐに,ある金融業のN社に派遣された。勤務形態は客先常駐である。そのシステム・インテグレータからN社には,6人のSEが派遣されていた。6人はそれぞれ別のチームに属しており,上下関係もない。しかし20代ながら最も古株のC氏が,6人のリーダーを自認していた。先輩風を吹かせるC氏の態度に,ほかのメンバーはかかわらないようにしていたが,まだ事情が分からない中川さんは格好のターゲットになっ