恐らく今年の邦画最大のヒット作になるであろうことに困惑する以上に、映画自体がとても困惑させられる作品だ。いや「見るからに特攻を美化した極右映画」だから困惑するのではないし、それは原作の小説ですらそういう構造にはなっていない。 ただ無為に平板な修辞語が無造作に 大量使用される薄っぺらで愚かしい原作 安倍晋三首相のオトモダチとしてNHK経営委員にまでなりながら問題発言の絶えない原作者だが、薄っぺらで愚かしいまでに子どもっぽいにも関わらず、そこに非常に複雑な屈折が解消不能なまま鬱屈しているのは、原作でも同じだ。ややこしいことに作者のメッセージは、まるで「特攻隊の美化」ではない。本人はそうしたかったのだろうが、まるで出来ていない。「特攻隊員は平和主義者だった」と、なんとか現代の、平成の価値観で特攻を美化しようとする自己矛盾に、作者も支持する読者も完全に無自覚であり、その矛盾を解消するためでもなく、