人間の感覚は思う以上に正確で優秀だが、苦手分野ももちろんある。 そのひとつが頻度や確率を取り扱うことである。 したがって確率計算は、常識や日常感覚から外れることが多い。だからこそ確率は有益である。 以下では、問題自体に実用の含みはないが、常識や日常感覚との齟齬の大きさが啓発的だ(=びっくりすると忘れにくい)と思われるものを紹介する。 考えるのは、この記事のタイトルに掲げた「クレオパトラの最後の吐息の一部を今あなたが吸い込む確率」である。 我々は、ラプラスの魔ほども全知ではないから、推測するにはいくつかの仮定をおかなくてはならない。 クレオパトラと我々を隔てる2千年余りの月日は、彼女の吐息に含まれる分子が大気全体に拡散するには十分な長さであり、しかしまたそれら分子が消えたり地球外に出て行くほどには長くない、と考えよう。 こうしておくと、問題は、たくさんの(たとえば100個)玉の中に数個(たと