ドイツ在住35年以上。母語の外側から文学と向き合ってきた日本人作家は、「言葉」から日本をどう捉えるのか。グローバル化の時代に求められる、姿勢を訊く。 2018年、アメリカで最も権威のある文学賞のひとつ「全米図書賞」の翻訳部門に"The Emissary"という作品が選ばれた。原題は『献灯使』、著者はドイツ在住の日本人作家、多和田葉子さんだ。日本人の受賞は36年ぶりだったことから、その知らせは快挙として、多くのメディアで伝えられた。 多和田さんは「母語の外側に出て、そこで感じるものから創作をしたい」と、大学卒業後すぐに渡独した人だ。若くして自らグローバルな環境に身を投じた多和田さんには、今の日本はどう見えているのだろうか。複雑に多様化する世界で、私たちが見失ってはならないものとは何だろうか。「言語」と「日本」と「グローバル」をキーワードに挙げながら、お話を伺った。 "私"を省略する世界と、そ