山あいの温泉施設が、最後のにぎわいをみせている。八ツ場(やんば)ダムができれば湖に沈む「川原湯温泉」(群馬県長野原町)の共同浴場「王湯(おうゆ)」。60年以上もダム問題に翻弄(ほんろう)された温泉街のシンボルだったが、30日で長い歴史の幕を閉じる。いったんは建設が白紙に戻されたダムは今秋にも本体が着工され、2019年度に完成する見通しだ。 28日、雨の中で白い湯気を上げる「王湯」。品川や横浜、熊谷など、車のナンバーは様々だ。10人も入ればいっぱいの内湯を、入れ替わり人が埋めていた。 閉館を知って訪れた長野市の会社員片桐卓也さん(28)は「風情があって、いい湯でした。なくなるのはもったいない」。来訪は5年ぶり。「お風呂から見えた建物がいまは取り壊され、『なくなってしまうんだな』と寂しかったです」。名残惜しそうに、風景を写真に収めた。 閉館が近づいて入湯者が増えた。今月は約2千人と、昨年のほぼ