【あらすじ】 「F国でテロ発生」。ある休日の朝、東雲貿易の広報部員、戸塚龍一はテレビの速報でこんなニュースを目にした。直後、上司からの電話で穏やかな休日は一変する。「うちの社員が被害に遭ったらしい」─。事態が飲み込めないまま出社した戸塚を待ち受けていたのは、これまで経験したことのない、マスコミとの戦いだった─。 「怒りの矛先」 昨夜はかなり飲んだ。飲んだというより浴びたと表現したほうが正確かもしれない。ここ1カ月、新商品の発表会、四半期の決算発表、社員の横領……、対応すべきことがありすぎた。その大半が終わりようやく一息ついたのが昨日だった。昨夜は家にたどり着いた記憶のないほど痛飲したのだろう。目が覚めると喉はカラカラでこめかみがズキズキしている。 昨日まで降っていた雨が止み、窓越しに眺めているベランダの枯れ木に降り注ぐ光が心地いい。「二日酔いの身体を醒ますには良いな」とひとりごちた。201
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