ホームレス風の老人が、カートに積んだものを出会った人に次々と渡していく。いじめられている少女には靴を、赤ん坊には風船を、青年にはギターを、そして…。小林武史のプロデュースでも話題の19才のシンガーソングライター、大知正紘の“手”のミュージック・ビデオ(MV)は、楽曲が内包したメッセージ性を、大胆なアイデアと美しい映像で見事に表現した素晴らしい作品である。この作品を監督したのは、いまだ20代の寒竹ゆり監督。岩井俊二に師事し、佐々木希の初主演作としても話題となった『天使の恋』で、昨年長編映画デビューを飾ったばかりの新進気鋭の監督だ。繊細な雰囲気の中に強い芯を感じさせる話し振りが印象的な寒竹監督に、このMVにまつわる話を伺った。 (インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作) ものの価値とか、手をつなぐという行為の本当の意味、価値って何だろうって連想していったんです。 ―“手”という楽曲を