イタリア出身のジュゼッペ・アルチンボルド(1527〜93年)は、驚きの画家である。動物や植物などをたくさん集めてパーツとして組み合わせる「寄せ絵」と呼ばれる手法で、人物の肖像画を描いている。例えば「四季」と題された連作のうちの《春》という作品に描かれた人間の横顔は、花を集めてできている。 ジュゼッペ・アルチンボルド《春》(1563年、油彩、板、マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵 © Museo de la Real Academia de Bellas Artes de San Fernando. Madrid) しかも、描かれた花の種類は実に80を超えるという。まさに“春爛漫”。イタリア人が四季に繊細な感情を持っていることに共感を覚える一方で、なんという発想だろうと感心する。東京・上野の国立西洋美術館で開かれている「アルチンボルド展」では、日本では普段ほとんど実物を