sacchan_orpheus 「信仰」という言葉の本来の意味は、ギリシャ語でpistis、つまり「信頼」である。目には見えない神への信頼こそ信仰の根幹を為すと言っても過言ではない。本稿では、主に新約聖書を取り上げてキリスト教における信仰とは如何なるものであるのかを考察したいと思う。 信仰においては疑問や迷いといった心理的な葛藤が生じる。そうでなければ信仰とは呼べない。狂信である。自分の信仰の仕方に100%自信が持てるのであれば、神はもはや存在ではなく、道具と化すのである。新約聖書ルカによる福音書18章9節からではファリサイ派と徴税人の喩え話が取り上げられている。自らの品行に絶対的な自信を持つファリサイ派と胸を打ちながら神の憐れみを乞う徴税人の姿が対比されているが、ここに信仰と狂信の違いが見える。 「狂信」を意味するラテン語のfanaticusは、fanum(神殿)に凝り固まっている状態を