江戸学の第一人者である法政大学の田中優子教授によれば、江戸時代の鎖国は新井白石が銀の輸出禁止令を出して貿易を制限したことに始まり、約30年かけて鎖国体制を築いたという。室町、戦国期は交易によるグローバル化が進んで経済活動が非常に活発化した時代だ。そこから一転、国を閉じて世界から孤立することで失うものは計り知れない。実に多くを捨てながら、しかし徳川幕府は平和と秩序という大きな実を取った。 決断するということは何かを選ぶということである。そして何かを選ぶということは、別の選択肢や可能性を捨てるということだ。優れた決断というのは、何を失うか、何をしないかをはっきりさせることだと私は考える。 何かを選べば、何かを捨てなければならないという二律背反の関係を「トレードオフ」という。江戸時代も明治期も日本人はトレードオフの決断をしてきた。決断できないマインド設定になったのは、戦後の高度成長期以降からだろ