2013-05-19 車椅子だらけのレストラン イタリアンレストラン「セディア・ア・ロテッレ」は今夜も満員御礼の大賑わいだった。 店の前で予約した名前を告げると、銀色に光る車椅子に乗ったボーイが手慣れた動きで器用にドアを開けた。このボーイは幼い頃に交通事故に遭い下半身が不随になってしまったのだが、今では立派なサービスマンとしてこの店に務めている。 来客である一人の紳士が満足気に微笑んだ。この店に訪れたのは初めてであり、今夜は友人達とささやかなディナーの約束があったのだ。自動操縦システムのスイッチを押すと、紳士の乗った車椅子は小さな斜面を上り始めた。ドアを開けたボーイは少し、それを羨ましそうに眺めた。彼の車椅子は自動操縦のシステムがない旧式のものである。 「◯◯様ですね。お待ちしておりました。お席へご案内いたします」 紳士を迎え入れたのは、シックなスーツを身にまとったウェイターだった。彼は車