父と母が若い頃の話だ。 初めて、父が結婚前、初めて祖母に挨拶をした帰り、深刻な顔をしてこんなことを言ったらしい。 「お前の母さん、韓国のスパイじゃないだろうな。」 祖母はあの時代、大学を卒業したインテリで、韓国で学校の先生をしていた。 母を育てるために日本にやってきたのだが、父からしたらスパイだとしか思えなかったらしい。 母は父の言葉を聴いて、「この人、馬鹿なんじゃないか。」と思ったそうだ。 もちろん、父の言っていることはただの思い違いだ。全く根拠がない。 一方、祖母は祖母で父の済州島出身者という経歴を気にしていた。 以前も書いたが、済州島は韓国に反乱を起こした島だと考えられていたからだ。 もしかしたら、祖母は私が済州島出身者になってしまうことも心配していたかもしれない。 何せ、北朝鮮のスパイだと思われてしまうかもしれないから。 これがスパイを日常の中で感じる瞬間だ。 私は日本で生まれ、日