◎日本銀行金融研究所 貨幣博物館◎ 貨幣の散歩道 第27話 米将軍吉宗と元文の改鋳 テレビや時代劇でお馴染みの八代将軍吉宗は、徳川幕府中興の祖として名高い。吉宗は、享保の改革を通じて、五代将軍綱吉の放漫財政や災害の発生などにより危機的状況に瀕していた幕府財政を見事に立て直したのであった。とくに享保7年(1722)、町人請負方式による新田開発を解禁のうえ年貢米の増収を図ったり、米価の調整に腐心したことにちなんで、吉宗は米将軍とも呼ばれる。しかし、財政立て直しに最も寄与したのは、国内産業の振興策ではなく、実は元文元年(1736)に実施された貨幣の改鋳という金融面からのリフレ政策であった。この貨幣供給量の増加は物価の急上昇をもたらし、深刻なデフレ下にあった日本経済に「干天の慈雨」のような恵みを与えた。例えば大坂の米価は、改鋳直後の元文元年から同5年までの5年間で2倍にまで騰貴するなど、徳川幕府の