「ねえ」 下校中に呼びとめられて、ふり返ると近所に住むひとつ年上の女子が立っていた。五年生の三学期、二月になったばかりの寒い日。朝は集団登校をしていたので、お互いに顔見知りだった。だけど、まともに会話したことなんか一度もない。その彼女が声をかけてくるなんてめずらしい。戸惑う僕に彼女は言った。 「あんた、今度の日曜日、ひま?」 なぜそんなことを訊くのだろう。そう思いながら、とくに予定はないと正直に答えると、 「じゃ、日曜日うちに来て」 「え、なんで?」と口ごもる僕に、彼女は「予定ないんでしょ」と詰めよる。僕は弱々しくうなずいた。すると彼女は「昼の一時に。待ってるから」とだけ告げて行ってしまった。返事も聞かずに。 日曜日、約束の時間ぎりぎりまで行くかどうか迷った。外で遊びたかったし、夕方には見たいアニメもある。だけどやっぱり、すっぽかすのはまずいよね。後が怖いし、さっさと行って、さっさと帰ろう
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