その晩の夕食のメニューは、いつもどおりのすいとんともやしの和え物だった。すいとんといっても、味のない、ぬるい塩スープに白いかたまりが浮かんでいるだけだ。 食事の号令を待っていると、そこへ監視官が入ってきた。汚れてベージュ色になったマスクの紐を右側だけ外し、副首相スタイルでがなり始めた。 「今夜は、明日の迎撃戦をひかえた大切な夜である。ここ横浜は首都防衛の最後の盾だ! そこで、農林水産上級副大臣閣下より、ありがたいお気持ちを頂戴した! これを糧に、明日の戦闘に打ち勝てる!」 すると、薄汚れた白衣の給仕班が入ってきて、ソーシャル・ディスタンスを守っているぼくたちのプレートに、肉のかけらとメロンを置いていった。 「食事、開始!」 ぼくたちはそれぞれの、ぼろぼろのマスクを外して、食事を始めた。原則、会話は禁止されていたが、一人の男がつぶやいた。 「おれ、ステーキ・チェーンで働いていたからわかるんだ