非常に聡明だった人がエグゼクティブ(経営幹部)や管理職に昇進した途端、愚かなことをするようになった──。 このような光景を目の当たりにしたことは、恐らく誰にでもあるでしょう。エグゼクティブになる以前は、慎重な姿勢で成功を収めてきた人が急に愚行を重ねるようになる。まさに謎ですね。 このように賢明な人であっても、権力を持つと行動が変わってしまうのはなぜなのか。この「パズル」を解き明かしたいと思い、調査を行いました。結論の1つは、権力を手にすると、周りの人に相談しなくなってしまうということです。自分の立てた仮説を検証せずに物事を決めるようになる。 そうした傾向が顕著に見られるのが、米国の歴代の大統領です。大統領の候補だった時には有権者の関心に注意を払い、周囲のアドバイスに耳を傾けていた。ところが、大統領に選出されて権力を手にするや、自分の直感だけに基づいて行動し始める。直感に基づいて起こした行動