ネット時代における書店の死と再生――代官山の蔦屋書店を訪ねて ある日曜午後。まだ夕食には早い時間だったが、東京・銀座のカフェに続々と人が集まってきた。一見、貸し切りのパーティでも開かれるのかと思うが、受付を済ませた人は3つのテーブルに分かれて座り、おもむろにカバンから同じ新書を取り出す――。 そこで開かれていたのは「猫町倶楽部」の「フィロソフィア東京」と称する読書会だった。猫町倶楽部は発祥地である名古屋のほか東京や大阪などで年間200回の読書会を主催・運営し、のべ約9000人が参加する日本最大の読書会コミュニティだ。その日の課題本は大澤真幸『社会学史』(講談社現代新書)で、カフェに集まった30人ほどがテーブルごとに本を片手に感想を語り始めていた。 「最初からこうしたスタイルでやろうとしていたわけではないんですよ」 猫町倶楽部主催者の山本多津也が言う。リフォーム会社の跡継ぎだった山本は経営者