ものを知らない自分のような人間が、最もよく使う書物は、どうしても辞書になる。 けれども、普段使いの辞書たちは、紙の書物ではない。 できるものはすべてデータ化されて、コンピューターや携帯端末に入っている。 辞書の持つべき検索性と携帯性は、とっくに紙の辞書を凌駕してしまっている。 紙の事典だと何十巻になる※複数の事典と辞典が、検索ソフトを使うと一度に引ける。複数の辞書を引くことが重要なのは、辞書は必ずどこか間違っているものなので※※、引き比べしないと危ないからである。 全文検索できることも含めて、百科事典は〈複数冊の綴じた本〉のという形態から解放されて、ようやくそのポテンシャルを現実のものにしたと思える。 ※ 梅棹忠夫は、アフリカ大陸でのフィールドワークに際して、平凡社の世界大百科事典を含めて大きな荷物は先に送っておいたのだが、現地に行ってみると百科事典だけが届いていた(のでそれで切り抜けた、