「頼むから入らんといてくれ」 今にして思えば、あれは「人生を生き抜いていくためのヒント」だったのかもしれない。 2007年夏の決勝、広陵対佐賀北の間で行われた一戦は、球史に残る大奇跡が起きた。 0-4で迎えた8回裏、佐賀北は1死から4イニングぶりとなる安打を放つとそこから連打と四球で1点を返すと、3番・副島浩史がレフトスタンドに逆転の満塁本塁打を放ったのである。 誰もが広陵の完勝を予感した試合だった。だが、たった1イニングだけの攻勢で試合の流れは大きく変わったのだった。そのまま、佐賀北が初優勝を果たした。 8回の攻撃中、スタンドが佐賀北の応援一色になり、様々な風が吹いたのもまた事実だ。微妙な審判のストライクゾーンをはじめ、広陵にとっては逆風ともいえる雰囲気に包まれていた。いくら勝負の世界とはいえ、弱冠17歳の高校生には残酷なシーンとさえいえるものだった。 そんな奇跡の大逆転を敗者として、誰