「今も、世界のどこかで――」 (『侍とカラシニコフ』初版同人誌に掲載の言葉) この小説は、二〇一一年三月東日本大震災義捐作品として制作したものです。 本文中、一部に過激な表現・セリフが存在しますが、 特定の国家・民族・思想・信条・宗教その他を貶めたり 暴力及び犯罪行為の助長・奨励をするものではありません。 ・第一部『東都』(遅くとも1853年から、1860年までの間) ◇ 一般に嘉永六年の初夏といわれる。 三百年続いた徳川氏の政道は、この年から壊れた。 極東の、とある弓状列島にあるこの日本という国は、長いあいだ、『鎖国』という言葉で表現される、一種異様な対外政策を長く、取り続けていた。 それは外国人を寄せ付けず、外国の文化や、宗教を寄せ付けぬという、幕府の基本的外交戦略からなり、それはこの三百年のあいだ、片時も他のものに変わることがなかった。 しかしこの日……ある事件を境にして、それは大き