ただいま話題のあのニュースや流行の出来事を、毎月3冊の関連本を選んで論じます。書評として読んでもよし、時評として読んでもよし。「本を読まないと分からないことがある」ことがよく分かる、目から鱗がはらはら落ちます。PR誌「ちくま」2020年9月号より転載。 百田尚樹はまちがいなく、二〇〇〇年代を代表するベストセラー作家である。デビュー作『永遠の0』は五〇〇万部。通史をうたった『日本国紀』は一〇〇万部。おまけに彼は「お騒がせ作家」でもあって、ツイッターや右派論壇誌でも過激な発言を続けている。なぜ彼はそれほどまでに人気があるのか。 この謎を解くうえで、石戸諭『ルポ百田尚樹現象』は示唆に富んだ本だった。副題は「愛国ポピュリズムの現在地」。 巻頭で著者はいう〈日本のリベラル派・左派にとって、最も「不可視」な存在の一つが「百田尚樹」とその読者である。彼らからすると、なぜ過激な右派論客である百田の本が読ま