忍性菩薩座像(極楽寺提供)鎌倉時代(13世紀)、奈良や鎌倉などを舞台に、ハンセン病患者や貧者らの救済活動を徹底して進めた律僧がいた。良観房忍性(りょうかんぼうにんしょう)(1217~1303年)。真言律宗総本山の西大寺(奈良市)に学び、病院や療養所、投薬施設、動物病院など、多くの救済施設を開設して、社会的弱者の救援、経済的支援をしただけでなく、架橋や作道などの社会基盤整備、寺院の復興事業も手掛けた。西大寺を再興した師の叡尊(えいそん)から「慈悲にすぎた」と評せられ、死後には「菩薩号」が贈られた忍性。仏教の「興法利生(こうぼうりしょう)」(仏教を盛んにして、他者を救済する)に全身全霊を傾けた生涯だった。 ハンセン病患者を背負って奈良の北郊、なだらかな丘陵地に南北に細長い棟割り長屋があった。十八の小部屋と仏間からなる「北山十八間戸(じゅうはちけんこ)」。忍性が開設に関わったと伝えられる、ハンセ