戦前の日本で「満鮮」や「満蒙」という言葉が多用されたのは、日本の大陸政策にからんだものであったことは確かです。満洲と朝鮮を一体化する、満洲と蒙古を一つの単位と見なすのは、日本の統治政策に都合がよかったからです。 しかし、だからといって、戦後になって、朝鮮民族と満洲人とモンゴル人を、有史以来まったく別の歴史を歩んできた別の民族集団として扱うのは、行きすぎた民族主義と言わざるを得ません。そもそも「民族主義(Nationalism)」は18世紀まで存在しなかったのですから、それ以前の歴史を「民族」に基づいてのみ判断するのは、史実を誤ることになります。 日本列島のように海に囲まれた島国の人間は、何千年もの昔から今の自分たちにつながる血統が、代々継承されてきたことに疑いを持ちません。しかし、人間の移動がひんぱんに起こった大陸の歴史では、血統は否応なく混じり合います。ところが、日本の国家主義・国民