地上の建築の設計では、「設計者」である建築家は、多くを決める立場にあります。 建物の配置、部屋のレイアウト、空間の大きさ、構造、空調や電気などの設備などについて、施主や利用者の意見を聞き、設計者が検討を重ね、最良と思われる案を選び出します。 そしてその案の建設費用を算定し、予算に合わせて修正を加え、施主から施工者に工事が発注されます。 しかし、地下鉄駅では、状況が違います。設計者の範囲は、駅の全体設計の、一部なのです。 構造や設備も設計者の範囲外です。 これは、地下鉄駅は、土木(シビルエンジニアリング)工事の一部であることによります。 駅全体の配置や、出入り口の位置と広さ、それにエスカレータとエレベータの位置と台数などは、土木設計によりあらかじめ決められ、その範囲で建築設計をすることになります。 したがって、駅の使い勝手を含めて、設計者には提案できない部分が多いのです。 (飯