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ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (62)

  • 『神話論理〈4-1〉裸の人〈1〉』 レヴィ=ストロース (みすず書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

  • 『神話論理〈3〉食卓作法の起源』 レヴィ=ストロース (みすず書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

  • 『光秀の定理』 垣根涼介 (角川書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

  • 『とまどい本能寺の変』 岩井三四二 (PHP) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 能寺の変はもちろん謎だが、変の後に起こった出来事もよくわからないことが多い。 毛利は一杯わされて領土割譲を含む和議を結ばされたとわかったのに、なぜ秀吉軍を追撃しなかったのか? 信長の三男の信孝は四国攻めのために明智軍をうわまわる軍勢を摂津に集めていたのに、なぜ弔い合戦をいどまなかったのか? 関東で孤軍となった滝川一益は敵地となった上野・信濃・木曾をどのように突破したのか? 安土に残っていた家臣たちはなぜあっさりと城を捨ててしまったのか? 書は安国寺恵瓊、織田信孝、信長の側室のおなべの方など信長周辺のマイナーな人物を主人公とした連作短編集だが、こうした疑問に鮮やかに答えを出し、信長の死で生まれた巨大な空白を前に右往左往する人々をシニカルに描きだしている。 歴史の脇役を主人公としているだけに、ありきたりの歴史小説では満足できなくなった人向けだが、能寺の変前

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  • 『王になろうとした男』 伊東潤 (文藝春秋) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 織田家を社員を使いつぶすブラック企業にたとえた人がいたが、ブラック企業でもすべての社員がつぶされるわけではなく、出世の道をひた走って高い地位にのぼりつめる社員もいれば、カリスマ経営者に心服して、出世とは関係なしに会社に献身することに喜びを見出す社員もいるだろう。 書は信長周辺の歴史の脇役を描いた連作短編集だが、出世レースに邁進して自滅していく野心家と、信長に惚れこんで運命をともにした忠義者という二つのタイプの武将が登場する。それぞれに面白いが、作品としては忠義者を描いたものの方がすぐれているようである。 「果報者の槍」 桶狭間の戦いで今川義元の首をとった毛利新助が主人公である。新助は論功行賞で義元の槍をあたえられ、黒母衣衆にとりたてられたが、その後はぱっとしなかった。 母衣衆は信長の指令を前線部隊に伝える連絡将校であり、いわば司令部勤務といえる。信長のそば近

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  • 『織田信長のマネー革命 経済戦争としての戦国時代』 武田知弘 (ソフトバンク新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 武田知弘氏は国税庁職員から物書きに転じた人で、『ヒトラーの経済政策』や『史上最大の経済改革“明治維新”』などの経済的視点の歴史物で知られている。 書も信長の天下統一を経済的視点から見直そうという試みであり、経済力において信長が他の戦国大名を圧倒していたことがさまざまに論証されている。 信長の天下統一が経済力を背景にしていたことは、織田軍が非常に金のかかる軍隊だったことからもわかる。 信長は長篠の戦いで三千丁の鉄砲を投入するなど火器を活用したが、鉄砲は高価であり、火薬に必要な硝石は当時は輸入でしか入手できなかった。 他の戦国大名は依然として農民兵に頼っていたので動員に時間がかかる上に、農閑期にしか戦えなかったが、信長はいちはやく兵農分離を進め、常備兵をかかえていた。戦争専門の常備兵が農民兵より強いのはあたり前だが、衣住を丸がかえにしなければならなず、農民兵よ

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  • 『信長の政略 信長は中世をどこまで破壊したか』 谷口克広 (学研) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 谷口克広氏は『織田信長合戦全録』や『信長と消えた家臣たち』、『織田信長家臣人名辞典』など、信長関係のレファレンスを精力的に執筆してきた人である。欄でも『検証 能寺の変』をとりあげたことがある。 谷口氏のは信長の家臣団や合戦など、特定分野の情報をバランスよくまとめてくれるので重宝してきたが、『信長の政略』も期待通りで、安心して読める。 書は「序章」で信長の天下取りのプロセスを概観した後、「第一部 周囲に対する政略」、「第二部 統一戦争へ向けた政略」、「第三部 民衆統治に関する政略」と三部にわけて記述している。 「第一部 周囲に対する政略」では「外交と縁組政策」、「室町幕府」、「朝廷」、「宗教勢力」という四つの章を立てているが、それぞれについて学説の変遷を簡潔に紹介するところからはじめているのはありがたい。 対朝廷政策については幕末の勤王思想家は信長を勤

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  • 『神話論理〈2〉蜜から灰へ』 レヴィ=ストロース (みすず書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 『神話論理』の第二巻である。表題の「蜜」とは蜂蜜、「灰」とはタバコの灰をさす。 レヴィ=ストロースは巻では「神話の大地は球である」ことを証明すると大見えを切るが、その前に蜂蜜について説明しておかなくてはならない。巻に登場する蜂蜜はわれわれがよく知っている蜂蜜とは似て非なるものだからである。 そもそもアメリカ大陸にはヨーロッパ人が西洋蜜蜂を持ちこむまでは蜜蜂は存在しなかった。しかし蜜を貯める蜂はいる。ハリナシバチやスズメバチの一部で、巻で「ミツバチ」と総称されるのはこのハリナシバチやスズメバチのことなのである(蜜をつくる蜂の総称を「ミツバチ」とすると紛らわしいので、第三巻以降は「ハナバチ」と訳語が変わっている。欄でも総称は「ハナバチ」で統一する)。 驚いたことにハリナシバチやスズメバチは花の蜜だけではなく、樹液や人間の汗、糞尿、腐肉なども餌にしていて、そ

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  • 『シンメトリーとモンスター』 マーク・ロナン (岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 群論の研究者が書いた一般向けのだが、内容はかなり高度である。 日版の副題は「数学の美を求めて」だが、原著では「もっとも偉大な数学の探求の一つ」となっていて、著者自身が参加した「アトラス(地図帳)計画」をさす。 群論を開拓したガロアは群を部分群に分解していくと、それ以上分解できない単純群と呼ばれる特別な群に行き着くことを発見した(単純群とは整数論における素数のようなものといえるかもしれない)。「アトラス計画」とは、この単純群をすべて分類しつくそうという壮大な計画で、1960年代にはじまった。当初は終わりがあるのかどうかもわからず、すくなくとも20世紀中には終わらないだろうと言われていたが、1980年頃には終わってしまい、1985年から電話帳のような『アトラス』の刊行がはじまった。 めでたしめでたしと言いたいところだが、探求の過程で「モンスター群」と呼ばれる巨

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  • 『シンメトリーの地図帳』 マーカス・デュ・ソートイ (新潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 今回、途中で放りだしたのも含めると群論関係のを13冊手にとったが、1冊だけ選べといわれたら、迷わず書を選ぶ。わかりやすいというだけでなく、文章に含蓄があり、天才たちのエピソードの紹介にも人間的な奥行が感じられるのだ。書は数学の啓蒙書を超えて一個の文学作品になっているといっていいだろう。 著者のマーカス・デュ・ソートイは現役の数学者で、群論と整数論を専門にしている。BBCの科学番組にたびたび出演していて(未見であるが、NHKから「オックスフォード白熱教室」として放映されている)、最初の著書『素数の音楽』は世界的なベストセラーになった。 書は数学者の一人語りの体裁をとっていて、40歳の誕生日の2005年8月から翌年7月までの1年間の出来事――家族旅行で訪れたアルハンブラ宮殿に平面で可能な17種類のシンメトリーを探したこと、沖縄で開かれた群論の小さな学会、共

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  • 『なぜこの方程式は解けないか』 マリオ・リヴィオ (早川書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 題名は『なぜこの方程式は解けないか』となっているが、方程式にふれているのは9章のうち3~5章で、全体の1/3ほどにすぎない。それ以外はすべて群論と対称性の話で、量子力学から生物学、さらには宇宙論にまで話がおよぶ。群論はそれほど射程が広いのだ。 著者のマリオ・リヴィオは宇宙物理学者だが、『黄金比はすべてを美しくするか?』という一般向け数学書で国際ピタゴラス賞とペアノ賞を受賞していて、才筆には定評があるようだ。 群論に関する欄でとりあげなかったものも含めて何冊か読んだが、情報量は書が飛び抜けて多く、トリビアが機関銃のように連射される。対称性がテーマだけに章題を 対称性を見る心の目 と鏡字で記すなど遊び心にあふれている。 第3章「方程式のまっただ中にいても忘れるな」ではメソポタミア文明から16世紀のヨーロッパまでの方程式の研究史が駆足でたどられるが、タルター

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  • 『もっとも美しい対称性』 イアン・スチュアート (日経BP社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 書の表紙には左右対称の美しい蝶の写真が大きくレイアウトされている。原題は Why beauty is truth: The story of Symmetry(なぜ美は真実か――対称性をめぐる物語)で、エピグラフに掲げられたキーツの詩の「美は真なり、真は美なり」にもとづく。 著者のイアン・スチュアートは『世界を変えた17の方程式』や『パズルでめぐる奇妙な数学ワールド』などの一般向け数学書を書いている数学者だ。 著者はガロアの群論によって対称性がはじめて数学の問題になったと評価している。 ガロアより前、この質問(対称性とは何か)に対するどんな答えも、漠然として内容がなく、均衡の美といったような特徴に訴えるものだった。筋道立てて数学を進めていけるような概念ではない。だがガロア以降、そして数学界が彼の特定の応用法に隠された一般的な考え方を理解して以降は、疑う余地の

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  • 『数学ガール ガロア理論』 結城浩 (ソフトバンククリエイティブ) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 わかりやすいといわれているガロア理論の解説をもう一冊読んでみた。ライトノベル風の物語にしたてた数学書として非常に人気のある『数学ガール』の五冊目である。 このシリーズは高校生の「僕」と、同じ高校にかよう秀才のミルカさん、一年下のテトラちゃん、そして「僕」の従妹で中学生のユーリの四人組が楽しくおしゃべりしながら数学を学んでいくという趣向で、今回は数学好きの集まる双倉図書館で「ガロア・フェスティバル」が開かれることになり、四人組も群論にチャレンジする。 第1章から第9章までが準備段階で、ガロア理論に必要な群論や体、線型空間、剰余類などの武器を入手し、経験値を高めていく。そして最後の第10章でいよいよガロアの「第一論文」の攻略にとりかかる(科学アカデミーに三度目に提出した論文だが、遺書に書かれた三の論文の構想では一目にあたるので「第一論文」と呼ばれることが多い

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  • 『13歳の娘に語るガロアの数学』 金重明 (岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 方程式の研究は16世紀に急激に進んだ。まず3次方程式の解法が発見され、すぐに4次方程式が解かれた。次は5次方程式だが、多くの数学者が挑戦したもののどうしても解けなかった。そこで解けない理由があるのではないかという疑いが出てきた。 5次方程式が加減乗除と√では解けないことを証明したのはノルウェイのアーベルだが、どういう方程式なら解けるのかという証明がまだ残っていた。 方程式の問題を最終的に解決したのは17歳のガロアである。彼は単に方程式が解ける必要十分条件を示しただけでなく、証明の過程で無限の問題を有限のモデル(群)に落としこんで解決する手法を編みだした。これがガロア理論で、現代数学のもっとも強力なツールとなっている。 今日大学でガロア理論をとりあげる際は、アルティンの『ガロア理論入門』(ちくま学芸文庫)のように、まず抽象化された群論を教え、最後にその応用として

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  • 『ガロアの時代 ガロアの数学』時代篇&数学篇 彌永昌吉 丸善出版 - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →『ガロアの時代 ガロアの数学〈1〉時代篇』を購入 →『ガロアの時代 ガロアの数学〈2〉数学篇』を購入 百歳の天壽をまっとうした日を代表する数学者が93歳と96歳の時に上梓したである。こういう言い方は失礼かもしれないが、よくある回想録の類ではなく、原資料や最新の研究にあたって書かれた格的な著作である。文章はきびきびしていて無用のくりかえしはない。90代半ばにしてこれだけの文章が書けるとは。かくありたいものだ。 書はガロアの生涯を描いた「時代篇」と業績を解説した「数学篇」の2巻からなる。 「時代篇」は4章にわかれ、各章の末尾には簡単な年表がついている。 第1章「時代背景 政治史から」は25頁ほどの簡単なものだが、ガロアが在籍したルイ・ル・グラン校やエコール・プレパラトワール、入学を果たせなかったエコール・ポリテクニークについてまとめられているのはありがたい。 エコール・ポリテクニーク

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  • 『ガロアの生涯』 インフェルト 日本評論社/『ガロア』 加藤文元 中公新書 - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →『ガロアの生涯 神々の愛でし人』を購入 →『ガロア 天才数学者の生涯』を購入 数学に群論という新分野を切り拓きながら、20歳で決闘に倒れたエヴァリスト・ガロアの劇的な生涯はある年齢以上なら文系の人間でも知っている。1970年代に高校生だった人はインフェルトの『ガロアの生涯 神々の愛でし人』を読んだか、評判を聞いたかしたことがあるだろう。羞しい言い方になるが、このは多くの高校生にとって青春の書だったのだ。 レヴィ=ストロースの『神話論理』を読みはじめて、いよいよ群論を勉強しないといけないなと思い、まず頭に浮かんだのが『神々の愛でし人』だった。絶版を危惧したが、2008年に新版が出ていた。今でも読みつがれているのだろう。 高校時代に感動したを読みかえすには躊躇があったが、今でも面白かった。ただ、伝記だと思いこんでいたが、これはまったくの小説だった。しかもガロア研究があまり進んでいなかった

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  • 『神話論理〈1〉生のものと火を通したもの』レヴィ=ストロース(みすず書房)/『アスディワル武勲詩』(ちくま学芸文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →『生のものと火を通したもの』を購入 →『アスディワル武勲詩』を購入 レヴィ=ストロースの大著『神話論理』の第一巻である。視力が落ちないうちに読みきりたいと思い、手をつけることにした。 レヴィ=ストロースには『アスディワル武勲詩』という神話研究の傑作がある。わずか120頁の小著ながら、カナダ太平洋岸、バンクーバーのあたりからアラスカにかけて伝承されたツィムシアン族の神話群を水際立った手際で分析してみせ、新しい神話研究の方法論を世に問うた構造分析宣言とでもいうべきである。 『神話論理』四部作は『アスディワル武勲詩』の延長上で起稿されたが、最初の二巻が主に南アメリカ、後半の二巻が主に北アメリカと南北両アメリカ大陸を覆い、邦訳にして3000頁近くにおよんでいる。 規模がこれだけ違う以上、重点の置き方も違ってくる。 神話にはオリジナルがなく、すべて異文だという立場は同じであり、異文を生みだす神話

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  • 『それからのエリス』 六草いちか (講談社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 『舞姫』のエリスのモデル、エリーゼ・ヴィーゲルトをつきとめた『鷗外の恋 舞姫エリスの真実』の続編である。著者がついにエリーゼの写真にまで行き着いたことは新聞の報道などでご存知だろう。書はこの奇跡ともいえる発見の顚末を語っている。 前著のしらみつぶしの調査の後でまだ調べることが残っているのだろうか、周辺的事実の落ち穂拾いで終わってしまうのではないだろうかと危惧して読みはじめたが、はたして370ページのうち最初の270ページは心配したとおりの展開だった。 六草いちか氏は調査を再開するにあたり一つの仮説を立てる。エリスは鷗外の子供を身ごもっており、ドイツに帰ってから産んだのではないか、というのだ。 そう疑う理由はある。まず不幸な結末にもかかわらずエリーゼが鷗外と文通をつづけていたこと。日くんだりまで行ったのに追い返され(帰りの船の件で森家はエリーゼにひどい仕打を

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  • 『鷗外・茂吉・杢太郎 「テエベス百門」の夕映え』 岡井隆 (書肆山田) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 医者にして文学者を兼ねた三大家――鷗外・茂吉・杢太郎――の明治の終りから第一次大戦にいたる10年に思いをはせた随想である。 副題の「テエベス百門」とはルクソール神殿や死者の谷があるエジプトの古都テーベのことで、木下杢太郎が鷗外の文業を「テエベス百門の大都」と形容したことにちなむ。著者は自分にとっては木下杢太郎と斎藤茂吉もテーベだと冒頭で語っている。 一貫した論旨はなく、時間軸に沿って語り進めるわけでもなく、日が世界の一等国に躍り出て、ちょっと気の弛んだこの時期を気の向くままに行きつもどりつし、三人の作品や日記、書簡、係わりのあった人の回想を読んでは感想を書きつらねていく。 分厚いであるが、歌人らしい濃厚な語り口に酔わされ、いつの間にか読みきってしまった。どの話題もたいして深まらないうちに次の話題に横滑りしてしまうのであるが、大正デカダンスに沈淪する語りの魅

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  • 『親族の基本構造』 レヴィ=ストロース (青弓社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 『親族の基構造』は1947年に刊行されたレヴィ=ストロースの主著である。レヴィ=ストロースの名を文化人類学の世界で一躍高めるとともに、構造主義の出発点ともなった。 日では刊行から40年もたった1987年になってようやく番町書房から最初の翻訳(以下「旧訳」)が出た。学問的に重要なであるのはもちろん、40年の間には二度の構造主義ブームもあったのに、これだけ時間がかかったのは『親族の基構造』がそれだけ難物だからだろう。 旧訳の翻訳にあたったのは日文化人類学の一方の中心である都立大の研究者たちで、書であつかわれる東シベリアからインドにいたる地域で実地調査した経験のある人も含まれていた。 学問的には申し分ないだろうが、旧訳は読みやすいではなかった。わたしは出た直後に読もうとしたが、第一部の手前で挫折した。 今回もう一度挑戦しようと思いたったが、2001年

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