20世紀は性悪説に立った資本主義と性善説に立った社会主義が対決する世紀であったが、ソ連の消滅に象徴されるように、社会主義の全面敗北という形で幕を閉じた。「成功した唯一の社会主義国家」といわれた日本においても、失われた10年を経て性善説の神話が崩壊してしまった。 社会主義は人間が本質的に善良で、自分の幸せだけでなく、皆の幸せをも望むことを前提にしている。この場合、人々の利己的行動が他人に損害を与えないように、法律や契約をはじめさまざまな制度を厳格に明文化したり、これを実行するために警察、裁判所、刑務所など公権力を行使する機関に膨大な資源を投入したりする必要がない。その上、人々は互いに信頼関係によって結ばれ、目標に向けて協力し合う。そのとき、競争よりも協調を重んじる社会主義は効率と平等が両立できる素晴らしい制度となる。 高度成長期の日本は概ねこの理想に近い状況であったが、性善説が成り立った(か