本稿は、いわゆるデルモデルといわれる経営モデルが、異なる産業の異なる製品にどこまで適用可能かを検討するものである。そのために、まずデルモデルの内容を整理し、その後にその有効性を支えている条件について論じたい。 デル・コンピュータの歴史 デル・コンピュータ社(以下ではデル社と略記)の歴史は、1984年に始まる。この年の5月、テキサス大学の一人の学生(マイケル・デル)が1,000ドルの貯金を元手に、ピーシーズ・リミテッドという名前のコンピュータの通信販売会社を設立したのが始まりである。1987年に企業名をデル・コンピュータとした。デル社の躍進ぶりはめざましく、1999年の全世界売上高でコンパックとNo.1を争う地位を確保している。純利益率も約8%(99年1月期)という高い水準にある。米国デルの売上は、1992年に約20億ドルだったものが、99年1月期には182億ドルと、わずか7年間で9倍に拡大