ナイキやプーマのウェブサイト上では、色や柄、素材などをたくさんのバリエーションの中から選び、世界に1つしかない自分だけのスニーカーを注文することができる。消費社会の極限を示した名コピー、「ほしいものが、ほしいわ」が世に出たのは1980年代のことであったが、多様化した消費者の「ほしい」ものを提供すべく進化してきた製造業は、今や世界に1つだけの商品をつくることができるようになった。製造業の進化の歴史から、日本のものづくり、そして未来のものづくりのカタチを考えてみる。 大量生産前史 「ほしい」という人間の欲望は、人類の歴史を作ってきた原動力である。食べることや寝ること、子孫を残すことといった生きるための欲望のレベルでは、"生産者"と"消費者"といった分類はなく、「ほしい」人と「つくる」人はほぼ一致していた。しかし、社会の発展は、人口増加と欲望の複雑化をもたらす。生存に必要とは言えない豪奢なもの、