「こいつ木嶋佳苗みたいだな」と罵倒され…… 彼女から依頼を受けて、私は苦い記憶を呼び覚まされた。2010年に第1回団鬼六賞の大賞を受賞し、私は小説家になった。様々な賞に応募し、ひっかかったのが官能の賞だったが、それまで官能小説なんて書いたことはなかったし、団鬼六という冠でなければ応募しなかった。そうして私は思いがけず「女流官能作家」という肩書をつけられ小説家になった。わざわざ「女流」と言われるのは、官能は男のものだという前提なのだろう。 デビューしてすぐ、あるスポーツ新聞の取材を受けて、その記事がウェブに転載された途端、匿名掲示板で私の容姿への誹謗中傷がはじまった。 「ブスが官能書くな! 死ね!」 「デブスのババアのセックス話、気持ち悪い!」 「こいつの写真を見て、吐きそうになった」 匿名掲示板の投稿は、幾つかのまとめサイトになり、拡散する。それを見た友人たちも、私が傷ついていないかと心配