「ファンタジー・ブームを終わらせた」作品 前回の連載では、ライトノベルにおける最初の(ライトノベルの始まりとともにあった)ファンタジーの歴史を大雑把に振り返った。続く今回は、そのファンタジーブームを「終わらせた」と言われている作品から始めたい。上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』だ。 本書は電撃文庫の小説新人賞、電撃ゲーム小説大賞(現・電撃小説大賞)の第4回大賞受賞作として、平成10年(1998年)に刊行された作品だ。 今でこそ「エンタテインメントノベルでNo.1シェア」を掲げる電撃文庫だが、その創刊は平成5年(1993年)と、平成元年前後に相次いで創刊した角川スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫と比べると後発のレーベルと言える。(注1) 創刊当初の電撃文庫は、そのラインナップにおいて、水野良やあかほりさとる、深沢美潮や中村うさぎなど、既存のライトノベル・レーベルでですに人気を博していた