仕事を抜け出し、日が高いうちからグイっと飲む。平日の昼酒。私のような小心者の会社員にとっては南米の秘境を訪れるよりも、南の島で美女と戯れるよりも実現が難しく感じる。近くて遠い昼間の居酒屋。本書にはそんな羨ましくてたまらない、散歩がてらの昼酒のエピソードが満載なのである。 著者は大竹聡氏。酒や酒場についての著述を手がけるフリーランサーでサラリーマンではないのだが、新橋ガード下サラリーマン臭が強いためか、われわれサラリーマンを昼酒の世界に心地よく誘ってくれるのである。詳しくは、HONZでも以前取り上げた『ぜんぜん酔ってません 酒呑みおじさんは今日も行く』を手に取っていただきたいが、大竹氏の泥酔時の気の大きさと素面に戻ったときの小心さがまさにわれわれサラリーマンを彷彿とさせるのだ。飲んで飲んで飲まれて飲んでぶっ倒れるまで飲んで、次の日もまた飲んでばかりいるさまは忘れ去られた昭和の新橋マンそのもの